大企業の苦悩と喜び

大企業のデザイナーになるということは、当然ながら「楽な」面もあります。部門は設計、生産、マーケティング企画、営業などに分かれており、それぞれに責任があります。デザイン部門でもさらに「クリエイティブデザイン」「アートデザイン」「テクニカルデザイン」に分かれます。そのうち、「クリエイティブデザイナー」は、私たちが通常「デザイナー」と呼ぶもので、四半期の全体と初期のスタイルデザインを担当します。他の2種類のデザイナーは、最初のタイプを補佐し、1つは服の素材のプリントまたは部分的なプリントデザインを担当し、もう1つはクリエイティブデザイナーのデザインスケッチをサンプルにする責任を負います。パターンメーカー、縫製工、刺繍工などはすべてこの部門に属します。

このように細かく分業されているため、大企業のクリエイティブデザイナーと中小企業のクリエイティブデザイナーの最も明らかな違いは、コンピューターを操作する必要がないことです。長い歴史を持つ大企業には昔ながらのデザイナーが必ず存在し、彼らのオフィスにはコンピューターさえないことも少なくありません。デザイナーには、それほど優れた描画スキルは必要ありません。私の卒業プロジェクトの指導者である、Crabtree & Evelyn の主任デザイナー Martha は、基本的に絵が描けませんでした。彼女のスケッチは小学校の宿題のように堅苦しいものでしたが、彼女のデザインのアイデアを表現することができ、技術者とコミュニケーションをとるには十分でした。もちろん、ある程度の技術的な知識を知っておくことはメリットばかりでデメリットはありませんが、大企業のデザイナーはパターン作成、裁断、縫製などの技術的な詳細に関与する必要はありません。サンプルが出た後に問題点を指摘し、修正を提案するだけで十分です。

しかし、正直に言うと、昔ながらのデザイナーは技術に精通していることが多く、デザインとパターン作成のワンストッププロセスに慣れており、サンプルが完成した後は自らフィッティングを行います。これはかつては生き残るための強みでしたが、20 世紀末から 21 世紀初頭にかけて、これらの優れたスキルはますます「役に立たないもの」になっていきました。中には、まったく役に立たないものもあり、技術部門から「うるさい」と思われて簡単に反感を買うことさえありました。私は工業用ミシンの使い方を知っています。一度、彼らが急いで仕事を終わらせようとしていたとき、十数人の縫製工が忙しくしていたので、私は待ちきれず、自分も仕事を始めました。私は彼らを助けているつもりでしたが、予想外に彼らの本心をさらけ出しました。それは単なる冗談でしたが、「そんなに有能な人にならないで、私たちに食べ物を残してもらえませんか？」それ以来、私は彼らのミシンに二度と触れませんでした。後で聞いたところ、彼らは全員組合員で、組合から仕事を奪うと大変なことになることもありました。

同社の上級管理職もデザイナーに「限界を超える」ことを奨励していません。彼らは、細かい分業がデザイナーにとって理想的な「創造的」環境を作り出すと考えています。デザイナーはこの「特権」をありがたく享受し、デザインやデザインに関わるすべてのことに専念すべきです。技術部門とうまく協力し、サンプルをうまく作成できれば、誰もが幸せになります。サンプルがショールームに入った後、デザインディレクターはデザイナーたちに買い物に出かけたり、展示会を訪れたり、インスピレーションを求めたり、すぐに次のデザインサイクルに入るように促すことがよくあります。あなたの服を誰が売るのか、どのように売るのか、誰に売るのか、これらはデザイナーが心配すべきことではありません。しかし、売れなければ、デザイナーは大いに心配しなければならないか、まったく心配する必要がないかのどちらかになります。

そのため、大企業で贅沢な生活に慣れているデザイナーにとって、何事にも苦労しなければならない小さな会社の生活環境に適応するのは非常に困難です。